入札の技術提案書をAIで下書き|総合評価で戦う中小建設会社の書き方

総合評価方式の入札で提出する技術提案書は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに「丸ごと書かせる」のではなく、公告の評価項目の分解・自社実績の棚卸し・提案骨子の下書きまでをAIに任せ、固有名詞や数値の検証と最終判断は人が行うという分担にすれば、質を落とさず作成時間を大きく圧縮できます。専用の入札支援ツールを契約しなくても、普段のChatGPT等で十分に始められます。この記事では、中小建設会社が自力でできる工程別のプロンプト例と、過去の提案書を「勝ちパターン資産」として活かす方法まで解説します。

技術提案書の作成に、ChatGPTなどのAIは使えるのか?

結論として、使えます。ただし「案件名を伝えて提案書を一発で書かせる」使い方は失敗します。AIは御社の現場も保有機械も知らないため、丸投げするともっともらしい一般論が出てくるだけで、評価する発注者にはすぐ見抜かれます。うまくいくのは、工程を分けてAIと人の役割をはっきりさせる使い方です。

工程AIに任せられること人がやること
公告・入札説明書の読み込み評価項目・配点の整理、要求事項の要約参加要件や条件の最終確認
自社実績の棚卸し実績と評価項目の対応付け、不足の指摘実績データを正確に渡す
提案の骨子・下書き課題→対策→効果の型で複数案を作成現場で実行できるかの判断と取捨選択
仕上げ誤字脱字の確認、字数調整、言い回しの統一固有名詞・数値の最終検証、提出の責任

ポイントは、AIは「下ごしらえと下書き」の担当、人は「事実の裏付けと判断」の担当という線引きです。以降、この表の順番どおりに具体的な手順を見ていきます。

そもそも、なぜ技術提案書づくりは中小建設会社の負担になるのか?

総合評価方式(総合評価落札方式)は、価格だけでなく技術力も点数化して落札者を決める仕組みで、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)を背景に広く使われています。安全対策、交通や周辺環境への配慮、工期短縮といった観点で技術提案が求められるのが代表的ですが、評価項目や配点は発注機関・案件ごとに異なります。制度の詳しい運用は、国土交通省や各発注機関が公表する最新のガイドライン・公告で必ずご確認ください。

負担が大きい理由は単純で、「公告と入札説明書の読み込み」「使える実績の掘り起こし」「提案文の執筆」がすべて属人的な手作業だからです。多くの会社では書ける人が社長や特定の技術者に限られ、通常業務の合間に何日もかけて書き上げます。応札のたびにこの負担が発生するため、「手が回らず入札自体を見送る」ことすら起こります。生成AIで削れるのは、まさにこの下ごしらえの時間です。

公告の評価項目は、AIでどう分解する?

最初の一歩は、入札説明書の総合評価に関する部分をAIに渡し、「何を・どの配点で・何点分書かされるのか」を表に整理させることです。読み込みに数時間かかっていた作業の下ごしらえが、数分で形になります。次のようなプロンプトが使えます。

あなたは公共工事の入札に詳しいコンサルタントです。
以下は入札説明書のうち、総合評価に関する部分の抜粋です。
次の4列の表に整理してください。
①評価項目 ②配点 ③発注者が求めている提案内容(意図を一言で)
④提案を書くために社内で集めるべき情報

【入札説明書の抜粋】
(評価項目・配点が書かれたページの文章をここに貼り付ける)

④の「集めるべき情報」まで出させるのがコツです。配点の大きい項目から社内ヒアリングを始められるため、着手の順番で迷わなくなります。なお、PDFを貼り付ける際は文字化けや表の崩れが起きやすいので、整理結果と原文の突き合わせは必ず人が行ってください。

自社実績の棚卸しと提案骨子は、AIでどう作る?

次に、過去工事の実績を箇条書きでAIに渡し、先ほどの評価項目と対応付けさせます。技術提案の説得力は「実績の裏付け」で決まるため、この工程を飛ばすと一般論しか出てきません。

当社の過去工事の実績を箇条書きで渡します。
先ほど整理した評価項目の表に対して、
「どの実績が、どの評価項目の裏付けに使えるか」を対応表にしてください。
裏付けが弱い評価項目には「不足」と明記してください。

【当社の実績】
・工事名/発注者/工期/工事概要/工夫した点/成績評定点(分かる範囲で)
・(件数分くり返す)

対応表ができたら、配点の大きい項目から骨子を作らせます。ここでは「複数案を出させて人が選ぶ」のが鉄則です。

評価項目「施工中の安全対策」について、技術提案の骨子を3案作ってください。
条件:
・「現場の課題→具体的な対策→期待できる効果」の3段構成
・対策は先ほどの対応表にある当社の実績で裏付けられるものに限る
・実行できるか不明な対策や、根拠のない数値は入れない
・1案200字以内

「根拠のない数値は入れない」という条件を必ず入れてください。これがないと、AIは「騒音を30%低減」のような出どころ不明の数字を平気で書き込みます。気に入った骨子が決まったら、「この骨子を、指定様式の字数に収まる提案文に清書してください」と続ければ下書きが完成します。

AIの下書きは、どう検証すればよい?

提出前の検証は人の仕事です。技術提案書は「書いたら履行義務が生じる文書」であり、実行できない提案は工事成績や信用に響きます。弊社が推奨する提出前チェックリストは次の5点です。

  • 工法名・機械名・資材名…実在するか、自社(または協力会社)で本当に使えるか
  • 数値…削減日数・台数・寸法などに根拠資料があるか。根拠を示せない数値は削除する
  • 公告との整合…工期・現場条件・地域要件と矛盾する記述がないか
  • 引き写しの残骸…過去提案の流用部分に、前案件の現場名や条件が残っていないか
  • 履行可能性…「実施します」と書いた内容を、落札後に本当に実行できるか現場責任者が確認したか

あわせて情報の扱いにも注意が必要です。生成AIの無料プランでは入力内容がAIの学習に使われる設定になっている場合があります。法人利用では入力データが学習に使われない設定やプランを選び、発注者名や現場の詳細をどこまで入力するか社内ルールを決めてから使ってください。

過去の提案書を「勝ちパターン資産」に変えるには?

AIを使う会社とそうでない会社の差が最も開くのが、この工程です。過去に提出した技術提案書と、開示されていれば技術評価点をセットでAIに読ませると、高評価だった提案に共通する構成や裏付けの示し方を、自社専用のチェックリストとして取り出せます

過去3件の技術提案書と、それぞれの技術評価の結果を渡します。
評価が高かった提案と低かった提案を比べて、
①構成の違い ②実績・数値による裏付けの示し方の違い ③改善すべき点
を報告してください。
最後に、次回の提案書づくりで使うチェックリストを作ってください。

抽出した勝ちパターンは、ChatGPTやClaudeのプロジェクト機能・カスタム指示に登録しておけば、次の案件では最初から自社の型で骨子が出てきます。応札のたびにゼロから書いていた提案書が、回を重ねるほど強くなる「資産」に変わるわけです。こうしたAIの仕込みを社長自身ができるようになりたい方には、経営者向けのAI個別プログラムで1ヶ月伴走しながら自社の案件で練習する方法もあります。

入札書類のAI活用を、自社の型にしたい方へ

技術提案書のAI活用は、「評価項目の分解→実績の棚卸し→骨子の下書き→人による検証」という工程分担ができれば、専用ツールなしでも今日から始められます。一方で、プロンプトの調整や情報の渡し方は、自社の案件でのすり合わせが必要です。

株式会社B.I.Yは、建設・建築・物流の中小企業に特化したAI活用のパートナーです。経営者向けのAI個別プログラム(1ヶ月マンツーマン・10万円税別)では、社長ご自身がChatGPTやClaudeを経営・実務に使えるようになるまで伴走します。入札書類のような「自社の言葉が必要な文書」こそ、外注ではなく社内でAIを回せる体制が効きます。まずは30分の無料相談から。お電話(050-3152-1971)またはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

よくある質問

技術提案書の作成に生成AIを使っても問題ありませんか?

提案内容の責任が提出者にあることは、手書きでもAI利用でも変わりません。発注機関によって書類作成の取り扱いに定めがある場合もあるため、公告・入札説明書を確認してください。そのうえで、固有名詞や数値の検証と履行可能性の判断を必ず人が行えば、下書きへの活用は現実的な効率化の手段です。

AIに書かせると、他社と似たような提案になりませんか?

案件名だけ伝えて書かせると一般論になり、似通います。差が付くのは自社の実績を渡してからです。過去工事の工夫や成績といった「自社にしかない情報」を裏付けに使わせれば、提案は自然と自社固有の内容になります。AIの役割は文章化であって、中身の源泉は自社の実績です。

無料版のChatGPTでも技術提案書づくりに使えますか?

操作としては可能ですが、無料プランでは入力内容がAIの学習に使われる設定になっている場合があります。入札書類は機密性が高いため、法人利用では学習に使われない設定・プランを選び、発注者名や現場の詳細をどこまで入力するか社内ルールを決めることをおすすめします。最新の仕様は各サービスの公式情報でご確認ください。

受注後の施工計画書にも同じ方法は使えますか?

使えます。「要求事項の分解→自社情報の整理→下書き→人による検証」という流れは施工計画書にも応用できます。ただし本記事が扱ったのは受注前の技術提案書で、評価で競う文書という性質上、実績の裏付けと勝ちパターンの蓄積がより重要になる点が違いです。