BIM/CIMは中小建設会社にどこまで必要か|原則適用時代の現実的な対応順

国土交通省の直轄土木業務・工事では、2023年度からBIM/CIM(3次元モデルで設計・施工の情報を共有する取り組み)の原則適用が始まりましたが、社員数十人の中小建設会社が今すぐ高額なソフトを揃えて全面対応する必要はありません。現実的な順番は「①自社の受注工事でどこまで求められるかを見極める → ②まず3次元データを閲覧・確認できる体制を整える → ③作成が必要な案件は外注も使いながら小さく経験を積む」です。ただし放置すれば、データ共有に応えられず受注機会を失うリスクが少しずつ高まります。本記事では工事の種類別に必要な対応レベルを切り分けて解説します。なお制度の適用範囲や時期は見直しが続いているため、最新は国土交通省の公式情報でご確認ください。

BIM/CIMの原則適用とは?中小建設会社にも義務なのか?

結論から言うと、原則適用の対象は「国土交通省が発注する直轄土木業務・工事」であり、民間工事や多くの自治体発注工事に法律上の義務が課されたわけではありません(執筆時点)。「BIM義務化」という言葉が独り歩きしていますが、まず自社に関係する範囲を正確に押さえましょう。

BIM/CIMとは、2次元図面中心のやり方に代えて、3次元モデルに部材や工程などの情報を持たせ、設計から施工・維持管理まで関係者で共有する取り組みです。公表されている方針では、原則適用は次のような枠組みとされています。

  • 対象は直轄土木の業務・工事。ただし小規模な工事や維持工事、緊急性の高い災害復旧工事などは除外とされています
  • 発注者が案件ごとに活用目的を明確にし、受注者が3次元モデルを作成・活用する仕組みです
  • 初年度は、未経験者でも取り組みやすい「視覚化」(3次元で見て確認する使い方)を中心とした項目からスタートしました

また建築分野では、建築確認申請で2026年4月から「BIM図面審査」の運用開始が予定され、2029年春を目標に「BIMデータ審査」へ進む方針が示されています。都道府県でも独自の要領を整備する動きがあると言われ、適用範囲は段階的に広がる方向です。適用条件や時期は変わり得るため、最新は国土交通省の公式資料でご確認ください

中小建設会社はどこまで対応すべき?工事の種類で切り分ける

全部をやる必要はありません。出発点は、自社の受注構成をもとに「閲覧・確認で足りる段階」と「モデルの作成・更新まで求められる段階」を切り分けることです。一般的な傾向を表に整理します(実際の要件は発注者・元請や契約図書によって異なります)。

主な受注工事想定されるBIM/CIMとの関わり当面の現実的な対応(一般的な傾向)
国交省直轄土木の元請発注者と直接3次元モデルをやり取りするモデルの作成・更新まで必要(外注の併用も選択肢)
直轄・公共工事の下請元請が用意したモデルを現場で確認・活用する閲覧・確認できる環境と担当者の確保
都道府県・市町村工事の元請自治体の要領により求められる範囲に幅があるまず閲覧体制+入札・発注要件の確認
民間工事が中心法的義務はないが、建築確認のBIM図面審査など環境が変化情報収集と閲覧体制の準備から

ポイントは、「作成」が必要になるのは今のところ限られた立場の会社だということです。下請中心・民間中心の会社がいきなり高額なソフトと専任者を揃えるのは、投資と実需が釣り合わないケースが少なくありません。逆に直轄工事の元請を目指すなら、作成体制(自前か外注か)まで含めた準備が必要です。

対応を放置すると、どんな経営リスクがあるのか?

今日明日に仕事がなくなる話ではありません。実際のリスクは、「声がかからなくなる」形で受注機会の損失が静かに進むことです。具体的には次の場面が考えられます。

  • 公共工事の入札で選択肢が狭まる…BIM/CIM活用が要件に入る案件に手を挙げられなくなります
  • 元請からの依頼に応えられない…下請でも「モデルで納まりを確認してほしい」という場面が増えると、閲覧環境がないだけで手間のかかる取引先になってしまいます
  • 生産性の差が積み上がる…3次元で干渉確認や数量把握を行う会社と、紙とExcelだけで照合を続ける会社では、手戻りの量に差が出やすくなります
  • 採用で見劣りする…デジタル対応の姿勢は、若手技術者が職場を選ぶ判断材料になりつつあると言われます

裏を返せば、最低ライン(多くの会社ではまず閲覧体制)を押さえておけば、過大な投資をしなくても機会損失の大部分は防げます。「全部やるか、何もしないか」の二択にしないことが中小の生き残り方です。

高額なソフトを買う前に、何から始めるべきか?

最初の一歩はソフトの購入ではなく、「閲覧できる体制」と「社内の受け皿」づくりです。次の順番で進めると、無駄な投資を避けられます。

  1. 受注構成の棚卸し…直近1〜2年の工事から、BIM/CIMが関わり得る案件(公共・元請・大手との取引)を洗い出す
  2. 要件の確認…主要な発注者・元請に「どのデータ形式で、どこまで求めるか」を直接確認する(想像で準備しない)
  3. 閲覧環境の用意…3次元モデルを開いて確認できるソフトを用意する(無償や安価なビューアから始められます)
  4. 担当者を1名決める…窓口を決めます。若手とベテランの2人組にすると現場知識とデジタルの両輪が回りやすくなります
  5. PC・環境の点検…3次元データは容量が大きいため、PCの性能・通信環境・データの保管ルールを先に整えます
  6. 実案件で「見る」から始める…まず閲覧・確認で使い、作成が必要になった時点で外注か内製かを判断します

BIM/CIM対応のソフトには、一般的に年間数十万円規模のライセンス費がかかる製品もあると言われます。使う人と使い道が固まる前に購入すると高価な置物になりがちですが、この順番を守るだけでその失敗はほぼ避けられます。社内にITに明るい人がいない場合は、AI・IT顧問のような外部の相談相手と進める方法もあります。

モデル作成は外注すべきか、内製すべきか?

判断基準は「必要な件数」「社内の人材」「継続性」の3つです。当面は必要な案件だけ外注し、件数が読めるようになってから内製化を検討するのが多くの中小建設会社にとって現実的です。

判断基準外注が向くケース内製を検討するケース
モデル作成が必要な案件数年に数件あるかどうか継続的・恒常的に発生する見込みがある
社内の人材専任を置く余裕がないCAD経験者や育てたい若手がいる
求められる内容案件ごとに内容がばらつく自社の得意工種で要件がほぼ決まっている
資金・時間初期投資を抑えて様子を見たいソフト費・教育費を数年で回収できる見通しがある

注意したいのは、外注でも「丸投げ」にはできない点です。納品されたモデルを自社で開いて確認し、現場に活かすまでは社内の仕事です。だからこそ、どちらを選ぶにしても前章の「閲覧体制と担当者」が先に必要になります。

補助金や支援制度は使えるのか?

使える可能性はあります。建築分野ではBIM導入の設計費等を国が補助する「建築BIM加速化事業」といった支援策が実施されてきたほか、ソフト導入にIT導入補助金などが使える場合もあります。ただし公募の有無・期間・要件は年度ごとに変わるため、検討の際は必ず各制度の公式サイト・事務局で最新の情報をご確認ください。補助金は「もらえるから導入する」ではなく、前章までの順番で必要性を固めたうえで負担を軽くする手段として使うのが健全です。

「うちの場合はどこまで必要か」を一緒に整理したいときは

BIM/CIM対応は、ソフト選びより先に「自社の受注構成でどこまで求められるか」「PC環境やデータの扱いをどう整えるか」という経営判断と体制づくりが肝心です。ここは製品カタログを読んでも答えが出ず、社内にITの相談相手がいない会社ほど判断が止まりがちです。

株式会社B.I.Yは、建設・建築・物流の中小企業に特化したAI活用のパートナーです。AI・IT顧問契約(月5〜15万円)では、AI・ITの相談から業務効率化、PC環境、セキュリティまで経営者の右腕として継続伴走します。「BIM/CIMにどこまで投資すべきか」という段階からのご相談も可能です。

まずは無料相談から。「うちの受注内容だと、何をどこまで準備すべきか」という質問だけでも構いません。お電話(050-3152-1971)またはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

よくある質問

BIM/CIMの原則適用はいつから始まりましたか?

国土交通省の直轄土木業務・工事では2023年度から始まりました。ただし小規模な工事や維持工事、緊急の災害復旧工事などは除外とされています。適用範囲は段階的に見直されているため、最新は国土交通省の公式資料でご確認ください。

民間工事が中心の中小建設会社にも対応は必要ですか?

現時点で民間工事に法律上の義務はありません。ただし建築確認申請では2026年4月からBIM図面審査の運用開始が予定されるなど環境は変わりつつあります。今は情報収集と、3次元データを閲覧できる体制の準備で十分な会社が多いと考えられます。

BIM/CIMに対応できないと仕事は減りますか?

すぐに減るわけではありませんが、公共工事の入札や元請とのデータ共有の場面で、対応済みの会社との差が広がる形で機会損失が進む可能性があります。まず閲覧・確認できる体制を整えるだけでも、その多くは防げます。

高額なBIMソフトをすぐに購入すべきですか?

いいえ、購入は最後で構いません。先に受注構成の棚卸し、発注者・元請への要件確認、閲覧環境と担当者の確保を済ませ、モデル作成が必要な案件は外注の併用から始めるのが現実的です。使い道が固まる前の購入はおすすめしません。

何から相談すればよいですか?

「自社の受注工事でどこまで求められるか」の整理からです。主要な発注者・元請への確認と、PC環境・データの扱いの点検が最初の論点になります。社内にITに詳しい人がいなければ、B.I.YのAI・IT顧問契約のような外部の伴走者に相談する方法もあります。

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