最低賃金の引き上げで人件費が増える中小企業が利益を守るには、価格転嫁(値上げ)と並行して、電話対応・データ入力・書類作成といった間接業務をAIで省人化し、「次の1人を採用せずに済む」体制をつくることが現実的な対策です。2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円(前年度比66円増)と過去最大とされる引き上げとなり、2026年度も引き上げに向けた議論が続いています(金額や発効時期の最新情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください)。値上げは取引先との交渉次第で限界がありますが、省人化は自社の判断で今日から着手できます。この記事では、建設・物流・卸の間接業務を例に、月何時間分をAIに置き換えられるかの試算モデル(一般例)まで具体的に解説します。
最低賃金は今いくら?2026年度はどうなる?
2025年度の改定で、最低賃金の全国加重平均は時給1,121円(前年度比66円増)となり、初めて全都道府県で1,000円を超えたとされています。2026年度の改定額は本記事の執筆時点(2026年7月)ではまだ審議中で、例年どおりであれば夏に目安が示され、10月ごろから都道府県ごとに順次発効します。政府は「全国平均1,500円」という目標を掲げており、引き上げの基調は当面続くとみられます。金額・発効日は都道府県で異なるため、最新は必ず厚生労働省や各都道府県労働局の公式情報でご確認ください。
経営への影響を単純計算の一般例で見てみます。時給が60円上がると、1日8時間・月20日勤務のパート・アルバイト1人あたり月9,600円、10人なら月9万6,000円、年間で約115万円の増加です。実際には社会保険料の会社負担分や、既存社員との賃金バランスの見直し、求人時給の相場上昇も重なるため、負担は時給の差額だけでは収まらないのが一般的と言われます。
なぜ価格転嫁だけでは利益を守り切れないのか?
結論から言うと、値上げは必要な打ち手ですが、「通せる幅」と「通せる時期」を自社だけで決められないからです。特に建設・物流・卸のように取引先との継続契約が中心の業種では、次のような制約があります。
- 交渉のタイミングを選べない…契約更新や単価改定の時期まで待つ間も、人件費は先に増えていきます
- 全額の転嫁は難しい場合が多い…発注側の予算や相見積もりとの兼ね合いで、増えたコストの一部しか乗せられないことがあります
- 波及コストが乗る…社会保険料の会社負担、既存社員の賃金バランス調整、募集時給の引き上げなど、最低賃金の差額以外の負担も増えます
だからこそ、「入ってくる側(値上げ交渉)」と「出ていく側(時間の使い方の見直し)」の両輪が必要です。省人化は取引先の承諾が要らず、自社の判断だけで始められる点が値上げとの大きな違いです。
AIで省人化しやすいのはどの業務?
狙い目は現場作業そのものではなく、事務所で発生している「間接業務」です。建設・物流・卸に共通して時間を食っているのは、電話番・データ入力・書類作成の3つで、いずれもAIが下書きや一次処理を担いやすい領域です。
- 電話・問い合わせ対応…伝言メモの整理、よくある質問への回答文づくり
- データ入力・転記…FAXや紙の伝票のデータ化、受発注情報のシステムへの転記
- 書類作成…見積書・請求書・日報・報告書・安全書類などの下書き
- メール対応…問い合わせへの返信文、案内や督促の文面の下書き
ポイントは、AIに「ゼロから全部」を任せるのではなく、下書きと一次処理をAI、最終確認を人という分業にすることです。この形なら、ITが得意な社員がいない会社でも現実的に回せます。
AI省人化で月何時間を取り戻せる?(一般例で試算)
あくまで説明のための一般例ですが、事務担当2〜3人規模の会社であれば、月40〜50時間分の間接業務をAI側に移せる計算が立つことは珍しくありません。次の表は、建設・物流・卸の事務所によくある間接業務を仮置きの時間で試算したモデルです。
| 間接業務の例 | 現状の目安(月) | AI活用後の目安(月) | 取り戻せる時間(月) |
|---|---|---|---|
| 電話の一次対応・伝言メモの整理 | 20時間 | 10時間 | 10時間 |
| 受発注・伝票のデータ入力/転記 | 25時間 | 10時間 | 15時間 |
| 見積書・請求書・報告書の下書き | 20時間 | 8時間 | 12時間 |
| 問い合わせメール返信の下書き | 15時間 | 6時間 | 9時間 |
| 合計 | 80時間 | 34時間 | 46時間 |
この「月46時間」は、1日4時間勤務のパート1人の月間労働時間(80〜90時間程度)の半分ほどに相当し、時給1,200円で単純換算すれば月5万5,000円前後の労働時間です。※数字はすべて一般例であり、実際の削減幅は業務内容・書類の形式・定着の度合いで変わります。
大切なのは、これが「今いる人を減らす」話ではないことです。増える注文や書類をAIに吸収させることで、本来なら次に採用するはずだった1人を、採用せずに済ませるという考え方です。浮くのは時給分だけではありません。求人広告費、面接や教育の手間、採用のミスマッチのリスクまで含めて不要になります。人手不足で「そもそも応募が来ない」地域や業種では、守りの一手であると同時に、現実的な成長策でもあります。
何から始めればよい?最初の一歩は?
高価なシステムをいきなり導入する必要はありません。最初の一歩は「時間を食っている間接業務の棚卸し」です。次の5ステップをそのままお使いください。
- 事務所の仕事を書き出す(「電話」「入力」「書類」「メール」の4分類で整理する)
- それぞれに月何時間かかっているかを、ざっくりで良いので見積もる
- 「同じ形式の繰り返し」が多い業務に印を付ける(ここがAI向きです)
- 印を付けた中から1つだけ選び、1ヶ月間AIで試す(最初から全部はやらない)
- 効果を時間で測り、良ければ2つ目の業務に広げる
なお、賃金の引き上げと設備投資を組み合わせた中小企業向けの支援策(業務改善助成金など)も用意されています。コースや要件、受付時期は年度ごとに見直されるため、活用を検討する場合は厚生労働省などの最新の公式情報をご確認ください。
「どの業務がAI向きか、自社だけでは判断がつかない」という場合は、30分の無料相談で貴社の業務内容を伺いながら、一緒に棚卸しをすることもできます。
増える人件費への備えは、値上げ交渉と省人化の両輪で
最低賃金の引き上げは今後も続く見通しであり、価格転嫁の交渉と並行して、間接業務の省人化で「次の1人を採用せずに済む」体制を整えることが、中小企業が利益を守る現実的な道筋です。株式会社B.I.Yは、建設・建築・物流の中小企業に特化したAI活用のパートナーとして、経営者ご自身が1ヶ月でAIを使えるようになるAI個別プログラム(10万円税別)や、自社の業務に合わせた仕組みを初期10万円+月額5万円〜(税別)で育てる伴走型DX開発などでお手伝いしています。
まずは30分の無料相談から。「うちの事務仕事のうち、どれがAIに向いているのか」を聞いていただくだけでも構いません。お電話(050-3152-1971)またはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
よくある質問
2026年度の最低賃金はいくらになりますか?
執筆時点(2026年7月)では審議中で、確定していません。例年は夏ごろに目安が示され、10月ごろから都道府県ごとに順次発効します。政府は全国平均1,500円の目標を掲げており、引き上げ基調は続くとみられます。金額・発効日は厚生労働省や各都道府県労働局の公式情報でご確認ください。
価格転嫁と省人化は、どちらを優先すべきですか?
両方必要ですが、先に着手しやすいのは省人化です。値上げは取引先との交渉が必要で時期を選べない一方、省人化は自社の判断だけで今日から始められます。省人化でコスト構造を整えつつ、値上げ交渉を進める両輪が現実的です。
パソコンが苦手な会社でも、AIによる省人化はできますか?
できます。すべてを一度に変えるのではなく、見積書や報告書の下書きなど1つの業務から小さく始めるのがコツです。AIが下書きし、人が確認する分業にすれば、ITが得意な社員がいなくても回せます。不安があれば伴走してくれる相手と一緒に始めると定着しやすくなります。
省人化は従業員の仕事を奪うことになりませんか?
目的は人員削減ではなく、「次の1人を採用せずに済む」ことです。単純な入力や下書きをAIに任せ、今いる社員には確認・交渉・現場対応など人にしかできない仕事に時間を使ってもらう、という役割の組み替えです。
最低賃金の引き上げに使える助成金はありますか?
賃金の引き上げと設備投資を組み合わせた業務改善助成金などの支援策があります。ただしコース・要件・受付期間は年度ごとに見直されるため、最新の内容は厚生労働省の公式サイトなどで必ずご確認ください。