評価制度がなく、社長の感覚で賞与を決めている中小企業でも、ChatGPTやClaudeのようなAIを使えば、賞与査定の根拠と社員への説明コメントを整理できます。手順は、①AIとの対話で社長の頭の中の評価基準を言語化し、②社員ごとの査定根拠メモを作り、③面談で伝えるコメントの下書きをAIに作らせる、の3ステップです。金額を決めるのはあくまで社長ですが、「なぜこの金額なのか」を言葉にできるだけで社員の納得感は大きく変わります。この記事では、社員5〜50人規模の会社を想定して、具体的な手順とプロンプト例、個人情報の扱い方までを解説します。
なぜ「なんとなくの賞与査定」が不満につながるのか?
先に結論を言うと、社員の不満の多くは賞与の金額そのものではなく、「理由が説明されないこと」から生まれると一般的に言われます。社長は真剣に決めているつもりでも、社員から見れば「何を頑張れば増えるのか分からない」状態だからです。
特に若手ほど評価の理由を求める傾向があると言われます。頑張りが反映されたのか分からないままでは「正当に評価されていないのでは」という不安になり、離職のきっかけにもなりかねません。逆に言えば、「あなたのここを評価して、この金額にした」と一言添えられるだけで、同じ金額でも受け止め方は変わります。
とはいえ、社員十数人の会社で評価制度を一から作るのは現実的でないことが多いでしょう。そこで使えるのがAIです。制度の代わりではなく、社長の頭の中にすでにある基準を、言葉にする手伝いをしてくれます。
評価制度がなくても、AIで賞与査定の整理はできるのか?
できます。むしろ評価制度がない会社ほど効果が出やすいものです。社長が長年の経験で培った「この社員は伸びている」「安心して任せられる」という判断は、たいてい的を射ています。足りないのは判断の質ではなく、判断を言葉にして本人に伝える工程だけです。
AIを使った賞与査定の整理は、次の3ステップで進めます。
- 評価基準の言語化…AIに質問役をさせて、社長の頭の中の基準を5項目程度に整理する
- 社員ごとの査定根拠メモ…各社員の働きぶりを基準に当てはめ、「評価できる点・物足りない点」を整理する
- 面談コメントの下書き…根拠メモをもとに、賞与面談で口頭で伝えるコメントをAIに下書きさせる
それでは、それぞれのステップを順に見ていきましょう。
社長の頭の中の評価基準を、AIでどう言語化する?
コツは、AIに「答えを出させる」のではなく「質問をさせる」ことです。いきなり「評価基準を作って」と頼むと一般論しか返ってきません。AIに面接官のように1問ずつ質問してもらい、社長が答えていくうちに基準が形になっていく、という使い方をします。次のプロンプト(AIへの指示文)をそのまま使えます。
あなたは中小企業に詳しい人事の専門家です。
私は社員20名ほどの会社の社長で、評価制度はなく、
賞与は私の感覚で決めています。
私の頭の中にある評価基準を言語化したいので、
「賞与を多めに出したい社員」と「そうでない社員」の違いが
浮かび上がる質問を、1問ずつ順番に投げかけてください。
質問が5〜7問終わったら、私の回答をもとに
当社の評価基準を5項目程度に整理して提案してください。
対話を重ねると、ふだん感覚で使っている言葉が、社員に伝えられる基準に変わっていきます。よくある変換のイメージを表にまとめます(一般的な例です)。
| 社長の頭の中の感覚 | 言語化した基準の例 |
|---|---|
| 「よく動いてくれる」 | 指示がなくても現場の段取りを先回りして準備している |
| 「安心して任せられる」 | 納期・品質のトラブルが少なく、報告・連絡が漏れない |
| 「最近伸びている」 | 去年は一人でできなかった業務を、今期は一人で完結できた |
| 「惜しい」 | 行動量は多いが、優先順位づけに課題があり成果につながっていない |
ここでできた基準は、来期以降の査定や採用時の人物像にも使い回せます。一度言語化しておけば、毎回の査定が楽になるのが、この方法の大きな利点です。
社員ごとの査定根拠メモは、どう作ればいい?
基準ができたら、社員一人ひとりの働きぶりを当てはめて査定根拠のメモを作ります。ポイントは、社長が覚えている具体的な事実を箇条書きでAIに渡すことです。材料を渡すのは社長の役目、筋の通った文章に整理するのがAIの役目です。
このとき必ず、実名は「社員A」「Bさん(仮)」のように置き換えて入力してください。プロンプト例は次のとおりです。
以下は社員A(仮名)の今期の働きぶりについての私のメモです。
先ほど整理した評価基準に沿って、賞与査定の根拠メモを
「評価できる点」「物足りない点」「総合所見」の3つに
分けて整理してください。
事実と私の解釈を区別し、断定しすぎない書き方にしてください。
・現場の段取りが早く、職人さんからの信頼が厚い
・6月の改修工事で発注ミスがあったが、報告が早く大事に至らなかった
・後輩2人の指導を任せているが、教え方にムラがある
出来上がった根拠メモは、そのまま社長の手元資料になります。全社員分を並べると評価の差に自分でも説明がつくようになり、金額のバランスを見直すきっかけにもなります。なお、AIに任せるのは整理までで、金額の最終決定は必ず社長自身が行ってください。
面談で伝える評価コメントは、AIでどう下書きする?
査定根拠メモができていれば、面談用のコメント下書きは数分で作れます。人事評価コメントをChatGPTなどに書かせるコツは、「何を・どの順番で・どんな口調で」伝えるかを条件として指定することです。条件がないと当たり障りのない褒め言葉が並びがちです。
上記の査定根拠メモをもとに、賞与面談で社員Aに口頭で伝える
コメントの下書きを作ってください。
条件:
・最初に、評価している点を具体的なエピソードとともに伝える
・改善してほしい点は1つに絞り、責めるのではなく期待として伝える
・「来期、何を頑張れば評価が上がるか」を明確に示して締める
・話し言葉で、3分ほどで話せる長さにする
大事なのは、AIの下書きをそのまま読み上げないことです。必ず社長自身が声に出して読み、事実と違う箇所や自分なら使わない言い回しを直して、自分の言葉にしてから使ってください。下書きがあるだけで、面談で何をどう伝えるかに悩む時間は大きく減ります。
AIに社員の情報を入れるとき、何に注意すべき?
結論として、個人が特定できる情報と機微な情報は入力しないのが大原則です。AIは社外のサービスに情報を送る道具である以上、賞与査定で使う際は最低限次のチェックリストを守ってください。
- 実名・住所・生年月日など個人を特定できる情報は入力しない…「社員A」「入社3年目の現場担当」のように置き換える
- 給与・賞与の具体的な金額は入力しない…「前回より増やしたい」「据え置き予定」など相対的な表現にとどめる
- 健康状態・家庭の事情などの機微な情報は入力しない…査定の参考にする場合も、AIには渡さず社長の頭の中で考慮する
- 入力内容がAIの学習に使われない設定・プランを使う…主要なAIサービスには学習に利用させない設定や法人向けプランがあります。条件は変わるため、最新は各サービスの公式情報でご確認ください
- 出力は必ず社長自身が確認する…AIは事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあるため、事実確認をしてから使う
賞与査定は社外に相談しにくい仕事だからこそ、この5点を守ればAIが良い壁打ち相手になります。逆に、置き換えを面倒がって実名や金額を入れてしまうのが一番のリスクです。不安があれば、経営者向けのAI個別プログラムのように隣で教えてくれる伴走役をつけて始めるのも一つの方法です。
冬の賞与に向けて、今から準備するには
賞与査定へのAI活用は、①評価基準の言語化、②社員ごとの査定根拠メモ、③面談コメントの下書き、の3ステップです。特別な制度もツールも要りません。支給間際は慌ただしいので、冬の賞与なら秋のうちに基準の言語化だけでも済ませておくことをおすすめします。
「自分の会社に合わせた使い方を教えてほしい」という社長には、株式会社B.I.Yの経営者向けAI個別プログラム(1ヶ月マンツーマン伴走・10万円税別)をご用意しています。賞与査定のような経営の実務にChatGPTやClaudeを使えるようになるまで、社長ご自身の課題に沿って伴走します。
まずは30分の無料相談から。「うちの規模でもAIで査定の整理ができるのか」といったご質問だけでも構いません。お電話(050-3152-1971)またはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
よくある質問
評価制度がない会社でも、AIで賞与査定の整理はできますか?
できます。AIは評価制度の代わりではなく、社長の頭の中にすでにある基準を言語化する手伝いをします。AIに質問役をさせて基準を5項目程度に整理し、社員ごとの働きぶりを当てはめて査定根拠のメモを作る流れなら、制度がなくても今日から始められます。
ChatGPTに社員の実名を入力しても大丈夫ですか?
実名の入力は避け、「社員A」「入社3年目の現場担当」のように置き換えるのが原則です。給与額や健康・家庭の事情などの機微な情報も入力せず、入力内容がAIの学習に使われない設定や法人向けプランの利用をおすすめします。設定方法の最新は各サービスの公式でご確認ください。
AIが作った査定根拠やコメントを、そのまま使ってもいいですか?
そのまま使うのは避けてください。AIは事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあるため、必ず社長自身が事実確認をし、自分の言葉に直してから使うのが前提です。あくまで下書きと整理の道具であり、評価と金額の最終判断は社長が行うものです。
賞与の金額そのものもAIに決めてもらえますか?
金額の決定はAIに任せるべきではありません。賞与は業績や資金繰り、社員間のバランスを踏まえた経営判断だからです。AIが役立つのは、判断の根拠を整理し、社員に説明できる形にするところまでです。根拠が言葉になっていれば、金額を決める判断も楽になります。
LINE Consultation
「うちの仕事も楽になる?」
そのひと言から、LINEでご相談ください。
何を頼めばいいか、決まっていなくても大丈夫です。5年間、顧問として紙やExcelを使う現場に向き合ってきたB.I.Yが、今の仕事を伺い、合う進め方を一緒に考えます。
「うちの会社でもAIで楽になる仕事があるのか、相談したいです。」
友だち追加のあと、困っている仕事をひと言送ってください。