「うちの仕事を楽にしたいけど、開発会社へ何を説明すればいいんだろう」。そこで、仕様書を作ろうとして手が止まる。画面の名前も、システムの言葉も分からない。忙しい社長なら、相談するための準備だけで一仕事になってしまいます。
最初から専門的な資料を作る必要はありません。話し始める材料にするなら、今使っている入力の見本、最後に欲しい結果の見本、いつも通りに進まない一件の三つ。どれも、普段の仕事の中にあるものです。
三点が全部そろわないと相談できない、という意味ではありません。目的は準備のハードルを上げることではなく、すでにある紙やExcelで仕事を伝えること。ここでは、初めて業務システムの開発を相談するとき、何を見せれば話が具体的になるかを整理します。
機能の名前だけでは、仕事の終わりが伝わらない
「在庫管理を作りたい」「日報をまとめたい」。それも立派な相談の入口です。ただ、その名前だけでは、誰のどの作業を減らし、何が出てきたら助かるのかまでは分かりません。在庫の数を知りたいのか、品物を探したいのか、出荷用の書類を作りたいのかで、必要な仕組みが変わります。
画面の絵を先に描くと、今のExcelの列をそのまま画面へ移したくなります。でも、その列がどこから来たか、次に誰が使うかが分からなければ、見た目を変えても打ち直しが残るかもしれません。そこで最初は、入力するところと、仕事の終わりに欲しいものを並べます。
社長は「何が分かれば判断できるか」を、担当者は「その結果を作るために何を確認しているか」を説明する。目的と手順を結ぶための現物です。社員に立派な説明資料を作ってもらうより、いつもの帳票を見ながら、分かっていることと分からないことを分ける方が始めやすくなります。
一つ目は、最初に情報が入る紙やExcel
入力の見本は、きれいに整理した一覧とは限りません。注文を受けたFAX、電話を聞いて書いたメモ、現場から届く日報、取引先のExcelなど、仕事が始まる場所の資料を選びます。後でまとめ直した表だけでは、最初に足りなかった情報や、担当者が補った項目が見えないからです。
見本の横に、誰が受け取り、どこを見て次の作業へ進むかを一行添えます。「この品番は別の表で調べる」「数量の単位は電話で確認する」など、紙に書かれていない確認も材料になります。詳しい操作手順を全部書く必要はありません。まずは、担当者が読み替えている箇所に印を付けるだけでも構いません。
以下の倉庫業・建築業の場面は、見本の選び方を説明するための仮定例です。B.I.Yのお客様の実際の運用や成果を紹介するものではありません。
例えば倉庫で、届いた荷物を受付し、商品と保管場所を記したラベルを作る仕事を考えます。入力の見本は、入庫予定表と、実際に荷物に付いてきた明細です。「商品名は明細を見て入力する」「予定表の管理番号と照合する」と説明すれば、どの情報を取り込めそうか、どこに人の確認が要るかを相談できます。
倉庫全体の資料を何か月分も集める必要はありません。まず一回の入庫に使った見本を選び、その一件を最後まで追える組にします。ただし、この一件だけで全社の仕様が確定するわけではありません。相談で確認する場所を見つける入口です。
二つ目は、画面より「最後に欲しい結果」
欲しい出力の見本には、今作っている納品書や発注書、社長が確認する一覧、現場へ渡すラベルなどを使えます。すでに書式があれば、そのまま参考にする。ないなら、見たい項目を紙に書くだけでも十分です。見栄えを整えるより、誰が何に使うかを添えてください。
倉庫の例なら、ラベルに商品名だけでなく管理番号も要るのか、保管場所は受付時に決まるのかを確かめます。入力の明細に保管場所がないなら、ラベルを自動で作る前に、誰かが場所を決めて記録する工程が必要です。入力と出力を並べることで、機械へ渡せる情報と、まだ人が決める情報を区別できます。
建築業で、材料の見積書を見ながら発注書をExcelへ打ち直す仕事も、同じ見方ができます。入力は受け取った見積書、出力は現場名と納入希望日を付けた発注書。見積書にない納入先を誰が決めるか、同じ見積の中で発注する材料をどう選ぶか。その違いが、作る範囲を決める材料になります。
「見積書を読み取れれば終わり」とは言い切れません。読み取った後に、発注対象を選び、足りない情報を補い、内容を確かめて送る仕事があるからです。完成した発注書だけでなく、元の見積書と対にして見せると、どこまで自動で進め、どこで確認を残すかを話せます。
三つ目は、いつも通りに進まない一件
いつも通りの見本は選びやすい。でも、相談を進めるときほど見たいのは、「このときだけ別のやり方になる」という一件です。担当者が手で直す場面には、会社の判断や、画面に必要な条件が隠れています。ミスを探して社員を責めるためではありません。
倉庫の例なら、予定表には同じ商品名が書かれていても、届いた明細には別の表記がある一件。勝手に同じ商品と判断してラベルを出してよいのか、確認待ちにして誰へ戻すのか。直した後のラベルだけを見ると消えてしまう経緯を、元の資料と短いメモで残します。
建築業の例なら、見積書にある数量の一部だけを発注し、残りはまだ決めていない一件です。発注した分と見送った分が、今はどこに残っているか。次の担当者が同じ材料を再度頼まないために何を見ているか。発注書の形が同じでも、通常とは違う確認が必要です。
例外は、頻繁に起きるものか、起きたときの影響が大きいものを選びます。最初に選んだ一件ですべてを代表させる必要はありません。説明を聞いた後で、他にも調べるべき条件がないかを確認します。「たまにしかないから全部省く」「一件あったから専用の機能を作る」と急いで決めず、人が確認して扱えるかも含めて比べます。
見せる資料と、渡す原本は分けて考える
話を具体的にしたくても、顧客情報や社員の情報が入ったファイルを、いきなり丸ごと送る必要はありません。まずは相談したい仕事と、資料の種類を伝え、何をどの方法で共有するかを確認します。会社名・個人名・連絡先・実際の金額などを架空の値に置き換えた説明用の見本でも、項目や仕事の流れは伝えられます。
見本を作るなら、原本とは別のファイルにし、相談に必要な項目だけを残します。Excelの表示部分だけでなく、別のシートやコメントなどに残る情報も確認してください。情報を消した結果、数量の合計や記録同士の関係が分からなくなるなら、架空の二、三行で関係を再現する方法もあります。実データの分析や移行が必要になったら、その段階で共有範囲を相談します。
資料に書かれていない判断を思い出せないときは、推測で埋めず、「ここは担当者に確認する」と残します。専門的な用語へ翻訳するより、分からない箇所が分かる方が役に立ちます。見本をそろえるために普段の仕事を大きく止めないことも大切です。
初回で決めるのは、作り方より次に確かめること
三点を見た後、すぐ開発に進むとは限りません。Excelの表を整えれば足りるか、今のソフトの機能を使えるか、会社独自の部分だけ作る必要があるかを確かめます。使う人数や場所、今のデータを取り出せるか、訂正の仕方も、費用と進め方に関わります。
この段階で、画面の配置、すべての機能、正確な金額や納期を決め切らなくても構いません。一方で、「帳票を作る部分だけ調べるのか」「元のデータの整理も対象か」など、次に確認する仕事の範囲は言葉にしておきます。詳しい調査や試作に進むなら、そこで発生する費用と依頼範囲も先に確認します。
今日できる小さな準備は、最近終わった仕事を一つ選び、最初の紙と最後の帳票を並べること。間の手入力や確認箇所に印を付け、同じ仕事で困った一件を添える。それが難しければ、「どの仕事を、どう楽にしたいか」を一文書くだけで、相談を始められます。
B.I.Yは、5年間の顧問でExcel・マクロや業務の仕組みづくりに取り組み、最近はAIも活用してシステムを開発しています。必要な部分を作り、使う人への説明と運用中の改善まで、仕事と契約範囲を確認しながら進めます。育てるシステム開発の進め方もご覧ください。開発から直接相談でき、顧問契約は前提ではありません。
埼玉県川口市を拠点とするB.I.Yの公式LINEへ、「仕様書はないですが、〇〇の打ち直しを減らしたい」と一言お送りください。資料を全部用意してから、と待たなくて大丈夫です。
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